
Note
新規事業を成功に導くには、綿密な「事業計画」が欠かせません。本記事では、JOB FREAK(人材紹介会社のための業務支援システム)の立ち上げを事例に、「課題からアイデアを生み出す方法」「市場規模を検証しながら事業計画に落とし込むプロセス」など、実際の思考の流れをご紹介します。
プロジェクトの全体像については、インタビュー記事「人材紹介業界の課題を解決した新規事業「JOB FREAK」開発ストーリー|株式会社アイビス」をご覧ください。
法人向けの新規事業を検討する際は、業界や特定セグメントの企業が抱える課題を言語化し、解決策をブレストするアプローチが有効です。本プロジェクトでは、インタビュー型のリサーチを採用しました。
テーマを特定する際、インターネット上のアンケートやレポートに頼らず、一次情報に直接触れることが最も重要です。弊社では、サービスアイデアや仮説を持たずにフラットな状態で、ただ「事実」だけを洗い出すことを意識しています。

今回のプロジェクトでは、依頼主自身が人材紹介事業を展開しており、代表の高橋様も人材業界に長く携わっているという背景がありました。そのため、まずは当事者である高橋様にリサーチを実施し、取り巻く環境を体系的に把握することから始めました。
キャリアの変遷、紹介事業を立ち上げた経緯、印象的な出来事、普段利用しているサービスなど、ざっくばらんにお話しいただくことで、ドメイン知識と当事者目線での理解が深まりました。
お話を伺う中で印象に残ったのは、業界でよく知られている業務システムを利用したものの、あまりメリットを感じられずに解約したという事実です。ここを深掘りすることでアイデアにつながるかもしれないと考え、複数の会社に業務プロセスをヒアリングさせていただきました。

主な業務の流れ
スカウト(複数サービスを利用)
求職者との面談・ヒアリング(オンライン・Googleドキュメントに記録)
求人情報の検索・収集(ATSや求人プラットフォームなど10種類にログイン)
求職者への提案準備(LINE・メール)
業務プロセスを整理すると、想像以上に多くのツールを行き来しながら業務をしていることに驚きました。また、自然と提案求人が偏ってくることも各社が課題と感じており、「求人提案をもっと簡単にすること」で事業拡大に直結するプロダクトが作れるのではないかと仮説を立てました。
ヒアリングを通じて、「人材紹介会社は複数のATSを活用して業務を行う必要があり、これは業界構造上の課題である」ことがわかりました。
そこで、各ATSの求人情報を自動で一元管理することで求人検索に専念できる環境をつくり、提案の品質が向上するようなサービスを新規事業として展開していくことになりました。
このサービスを構築する上で、「各ATSから求人情報をどのような形式で取得できるのか?」ということがポイントになります。
RPAによってデータを取得できることは想像できましたが、reCAPTCHAや二段階認証のような強固なセキュリティ対策がされている場合、継続的にデータへアクセスすることができません。また、取得できる形式によってはテンプレートに当てはめることが困難になります。
検証の結果、主要ATSからの求人データ取得が技術的に実現可能であることが確認できました。しかし、ATSの特性上、フォーマットパターンが無限に存在し、運用上の課題になることもわかりました。
技術検証の成果物として、Chromeプラグインでのプロトタイプ開発を選択しました。自身のパソコン上で実際に操作を行い、求人情報を取得する「感動ポイント」を体感することで、サービス利用者の気持ちを擬似体験できると考えたからです。
プロトタイピングの結果、満場一致で次のステップに進めることになりました。

マーケットサイズを試算する上でメインターゲットを決める必要がありますが、「中小企業」や「地方の会社」のような解像度ではなく、設定した課題に直結する要因から言語化することで、メインターゲットが適切に限定でき、アジャイルな事業計画を策定することが可能です。
今回は、以下のキーワードを活用してターゲットの試算を行いました。
企業から直接求人を預かっている
業務管理システムを導入している(自社、有料サービス)
3名以上の紹介会社
事業の市場規模を把握するためのフレームワークとして、TAM/SAM/SOMを活用しました。
・TAM(Total Addressable Market):理論上考えられる最大の市場規模
・SAM(Serviceable Available Market):アプローチ可能な市場規模
・SOM(Serviceable Obtainable Market):実際に獲得可能な市場規模
少数で事業を立ち上げる場合、当社ではSOM(実際に獲得可能な市場規模)の5%を3年で獲得する計画を現実的な計画として活用します。100、500、1000契約などの大きな数字を安易に設定する事業計画をよく見かけますが、そんなに甘くないのが現実です。
マーケットサイズを調査していく過程で以下のことがわかりました。
紹介業界は大部分が10名以下の小規模事業者
紹介業界に新規参入する企業が年々増加している
ATSを導入する採用企業が年々増えている
マーケットサイズの調査で、現時点でも十分採算が取れるマーケットがあることが確認できました。さらに、紹介会社が今後さらに増えていくことが予想できたことと、課題の根源にある「ATS」がシェアを伸ばしていることはこの新規追加にとっては好材料でした。
競合リサーチは生成AIをフル活用し、インターネット上の情報を網羅しました。リサーチ時点で類似サービスは存在しませんでしたが、将来的に競合が現れる可能性はあります。
しかし、アイビス様自身が紹介事業を行っており、日常的にこのサービスを利用するということでしたので、今後類似サービスが出てきたとしても、常に一歩先の機能提供ができると考えました。
そのため、求人の一元管理を主要機能にしながら定期的に機能追加を行い、業務システムとして成長させていくことで、「先行者利益」「プロダクト品質」の両面で競合優位性があると考えました。
<後日談>
実はJOB FREAKが開発フェーズに入ったところで、類似サービスがリリースされました。
サービスを調査したところ、紹介会社の業務プロセスに対して過剰な機能が多数備わっていました。やはり、「当事者であること」がプロダクトの品質に影響することを体感し、リリーススケジュールを変えずに慎重に機能を開発し、JOB FREAKをリリースしました。
JOBFREAKプロジェクトでは、業界の当事者である高橋様へのヒアリングから始まり、複数の人材紹介会社の業務プロセスを丁寧に整理していく中で、「10種類以上のツールを行き来する煩雑さ」という本質的な課題に辿り着きました。
表面的な不満ではなく、対話を重ねて深掘りすることで課題の本質が見えてくる。このプロセスこそが、的確な事業アイデアを生み出すための第一歩だと実感しました。
また、技術検証とプロトタイピングの段階では、机上の空論で終わらせず、Chromeプラグインという形で実際に動くものを作り、チーム全員で「感動ポイント」を体験しました。この共通体験があったからこそ、その後の開発フェーズでもブレることなく、サービスの核となる価値を磨き続けることができました。
市場リサーチでは、単に「市場規模が大きい」という表面的な数字ではなく、ターゲット企業の特性を丁寧に言語化し、実現可能な事業計画に落とし込みました。さらに、アイビス様自身が日常的にサービスを使い続けることで、競合が現れたとしても常に一歩先を行けるという確信も得られました。
一次情報に触れること、課題を深掘りすること、価値を体感できる形にすること。この3つのステップを丁寧に踏むことで、新規事業の成功確度は大きく高まります。
次回の記事では、この事業アイデアを具体的なサービスに落とし込んだ「UIで会話する要件定義術。サービス設計の裏側を公開(JOB FREAK編)」をご紹介しています。ぜひご覧ください。
会社名 | 株式会社アイビス |
サービス名 | JOB FREAK |
概要 | JOB FREAK(ジョブフリーク)はチーム力を高める、人材紹介会社のための業務支援ツールです。JOB FREAKを導入すれば面談から入社までを一元管理することができ、煩雑な作業から解放され、本質的な採用支援活動に専念できる環境を提供できます。 |
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